チョ・ポムジン監督「アーチ&シパック 世界ウンコ大戦争」


全てのエネルギー源が枯渇し、ウンコが貴重なエネルギーとなった地球。人々の肛門は統治者によって管理され肛門にIDチップが埋め込まれる… (写真:神戸市中央区元町映画館エントランス)
こんな話を聞いたら誰でも観に行きたくなるじゃあないですか。「ウンコ」というフレーズは人々を永遠に魅了するものなんです。かなり「オゲレツでハイクオリティー」という前評判は聞いていたのですが、いやはや、ほんと驚きました。
ウンコというテーマはもとより、もう気持ち悪いんです。首が飛ぶし腕が飛ぶし、ヒロインの肛門にIDチップをつけた陰茎型のオブジェがぶちこまれるし、アクションがすごすぎて酔いそうになるし、主役の二人をはじめとするキャラクターは悪人ばかりだし…。一体誰に向けて作られた映画なんだ!と。私は基本的にはアクションは嫌いなんです。アクション映画やアクションシーンの連続というものはいつもほとんど憶えていないんです。「マトリックス」も「インセプション」も鑑賞直後でもほとんど憶えていませんでした。でもですね、今回は一晩明けてもほぼ全てのシーンを鮮明に憶えているんですよね。というか、忘れさせてくれないんですよね、あのエネルギーが。
「作りたい作品を作る」ということは、お金さえかけないのであればなんとかなることなのではないでしょうか。興行性を無視した「やりたいこと」に対してお金を出してくれる人を見つけるということの方が遥かに難しいのではないでしょうか。本作品を観てまず驚いたのは「よくもまあ、これにこんなにお金を出してくれる人がいたなあ!」ということ。出来上がったものはまさに「ハイクオリティ」なんですよ。でもですね、それは完成してからわかることで、製作開始前に潜在的スポンサーにこのキャラクター達を見せてウンコとアイスキャンディーを奪い合う近未来映画と説明したところで誰が3億円以上も出してくれるのですか??それをやらせてくれる韓国映画界の懐の深さと映画への力のいれよう、あっぱれです。

一体、この映画の画面から溢れてくるエネルギーって何なのでしょうか。それはもう観客をほとんど無視していると言ってもいいほどの、作りたいものを作るんだという作り手の執念のようなもんではないかと思うんです。全てに甘さがないんですよね。先にも述べたようにキャラクターが気持ち悪いし(フロシキさん(上写真)は別)、何よりあの映画のパロディーの嵐!「氷の微笑」「エイリアン」「ミザリー」をはじめ、誰でもやってみたくなる「戦艦ポチョムキン」から「パルプ・フィクション」まで。他作品を詰め込んでくるのって監督の「やってみたかって~ん」という思いでしかなく、低予算B級映画ではよくあることなのですが、本作品くらい大掛かりな作品では普通やらせてもらえないんじゃないでしょうか。もうやりたい放題という感じ。くどいようですが、こういう作品に時間とお金と情熱をかけられる今の韓国映画界ってもう恐るべし!です。
説教めいたことは一切なし、甘さの微塵もない本作品なのですが、一ヶ所だけ「そうだよなあ」と共感したのは、フロシキキングがフロシキギャングどもに向かって言う「我々は摂食と排泄から開放されたエリートである」という言葉。ほんと、摂食と排泄から開放されれば人生随分楽でしょうね。

「アーチ&シパック 世界ウンコ大戦争」
製作:2006年 韓国
監督:チョ・ポムジン
公式サイト:http://www.aanss.jp
第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀アニメーション賞
ソウル国際カートゥーン&アニメーションフェスティバル2007大賞
元町映画館にて4/6まで絶賛(?)上映中!

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